相続放棄を選ぶ事例

文責:弁護士 井川卓磨

最終更新日:2023年03月09日

1 相続放棄をする理由

 意外と知られていないことですが、法律上、相続放棄をする理由は限定されていません。

 なんとなく相続手続きが面倒そうだから、という理由でも相続放棄はできてしまいます。

 とはいえ実務上、相続放棄をする理由の大半は、①被相続人に多額の借金がある、②被相続人やほかの相続人と関わりたくない、③家業を継ぐ相続人に相続財産を集中させたい、というものです。

 ①と②は、相続するよりも、相続放棄をした方が経済面、精神面、労力面においてプラスになるという考えによるものです。

 ③は、どちらかというと慣習や伝統によるものですが、遠く離れた相続人が家業の事業用資産を有していたり、事業のための借入金債務を負っていても不便なので、特定の相続人に集約させるという場合などがあります。

2 ①被相続人に多額の借金がある場合

 被相続人が大きな負債を有していて、かつめぼしい財産がないような場合、経済的な側面からみると、相続放棄をしてしまった方が有利に働きます。

 実務上は、被相続人にめぼしい財産はないが、負債を有している「可能性がある」という理由で相続放棄を希望される方が多いです。

 自宅に、貸金業者から被相続人宛の請求書が届いたような場合、ほかにも借金をしているかもしれないという心理が働くためです。

 また、被相続人が生活保護を受給していたような場合は、通常であれば財産はほぼない一方、負債は有している可能性があります。

 このような場合も、後でどのような請求がくるかわからないという観点から、相続放棄を選択します。

3 ②被相続人やほかの相続人と関わりたくない

 数十年も前に離別したっきり、被相続人とまったく交流がなかったというケースもよくあります。

 このような場合、被相続人の財産に関する情報はほとんど知らない状態です。

 また、遠く離れた場所にある市役所から、被相続人死亡の通知が届いたような場合、被相続人の住所まで行くだけでも大変です。

 そのため、相続放棄をするということがあります。

 また、何らかの事情で家出をして、ほかの相続人との関係が悪いという方もいらっしゃいます。

 家族とはかかわりたくないという理由で、相続放棄を選択することもあります。

4 ③家業を継ぐ相続人に相続財産を集中させたい

 地方にご実家がある方の場合、一人の相続人が地元に残って家業を継ぎ、他の相続人は会社に就職するなどして地元を離れているというケースもあります。

 このような場合に、家業を継いだ相続人にすべての相続財産を集中させるため、他の相続人が相続放棄をするということがあります。

 他の相続人が相続放棄をすると、負債も特定の相続人に集約することができるので、地元の金融機関との円滑な関係を保つこともできます。

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